2024年度乙種過去問【基礎理論】

問1 気体の性質に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)実在気体は、低温の条件では、理想気体に近い性質を示す。

(2)相変化に伴い吸収又は放出される熱を、潜熱という。

(3)臨界温度より高い温度では、圧力をどれほど高くしても気体を液化させることはできない。

(4)気体の粘度は、温度の上昇とともに増加する。

(5)気体の粘度は、圧力によってほとんど変わらない。

答え

答え(1)

実在気体は、高温または低圧の条件では、理想気体に近い性質を示す。

問2 温度27°C、圧力50kPaのメタンが入っている容積400m³の容器Aと、温度27°C、圧力20kPaのプロパンが入っている容積200m³の容器Bを接続した場合の混合気体全体の圧力(kPa)として、最も近い値はどれか。ただし、いずれの気体も理想気体とし、容器AとBの接続後の混合気体の温度は27°Cと一定で、接続の容積は無視できるものとする。

(1)30 (2)35 (3)40 (4)55 (5)70

答え

答え(3)40

容器A:PA = 50kPa、VA = 400m³

容器B:PB = 20kPa、VB = 200m³

P = (50×400 + 20×200) / (400+200)

= 24000 / 600

= 40 kPa

問3 温度300K、圧力100kPaの気体1m³を定圧膨張させて2m³にした。このとき、気体がした仕事(kJ)として、最も近い値はどれか。

(1)100 (2)200 (3)300 (4)400 (5)600

答え

答え(1)100

定圧変化の仕事の公式

W = P ⋅ (V2 − V1)

より、

W = 100⋅(2−1)

= 100 kJ

問4 気体の熱力学に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)熱も仕事もエネルギーの一形態である。

(2)等温、定圧で2種の理想気体を混合すると、エントロピーは減少する。

(3)逆カルノーサイクルを用いたヒートポンプの成績係数(COP)は必ず1以上となる。

(4)熱力学の第二法則によれば、熱は自然には低温度の物体から高温度の物体へ移ることはできない。

(5)理想気体を可逆的に断熱膨張させた場合、内部エネルギーは減少する。

答え

答え(2)

等温、定圧で2種の理想気体を混合すると、エントロピーは増大する。

問5 カルノーサイクルにおいて、高温熱源(750K)から熱 Q₁を吸収し、低温熱源(300K)に熱 Q₂ を放出する場合、放熱量と吸熱量の比(Q₂/Q₁)として、最も近い値はどれか。

(1)0.10 (2)0.40 (3)1.00 (4)2.50 (5)7.50

答え

答え(2)

高温熱源 Th:750K

低温熱源 Tl:300K

放熱量と吸熱量の比:Q₂ / Q₁ = Tl / Thより

300 / 750

= 0.40

問6 化学反応と化学平衡に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)一次反応において、反応物質の濃度が半分に減少するのに要する時間は、反応のどの時点から測っても同じである。

(2)化学平衡とは、可逆反応において、順方向と逆方向の反応速度が等しくなった状態をいう。

(3)ある反応温度で発熱反応を平衡状態になるまで進行させたのちに、反応温度を上げると、反応はさらに進行して、新たな平衡状態に達する。

(4)ある反応の標準自由エネルギー変化がわかれば、平衡定数を計算により求めることができる。

(5)水を電気分解すれば、水素と酸素を発生させることができる。

答え

答え(3)

ある反応温度で発熱反応を平衡状態になるまで進行させたのちに、反応温度を上げると、熱の吸収が起こる方向(吸熱反応)に平衡は移動する。

問7 電気化学反応に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)物質の持つ自由エネルギーを直接電気エネルギーとして取り出すことができる。

(2)電子を受け取る反応をカソード反応という。

(3)標準電極電位が高い金属ほど、イオン化傾向は小さい。

(4)電池を構成したとき、標準電極電位が高い方がプラス側の電極となる。

(5)銅(Cu)の標準電極電位は、マグネシウム(Mg)より低い。

答え

答え(5)

銅(Cu)の標準電極電位は、マグネシウム(Mg)より高い

問8 メタン 5 m³ を空気比 1.5 で完全燃焼させるのに必要な空気量(m³)として、最も近い値はどれか。ただし、気体は標準状態(温度 0°C、圧力 101325 Pa)とし、空気中の窒素と酸素の体積比は 4:1 とする。

(1)15 (2)30 (3)50 (4)75 (5)90

答え

答え(4)75

メタンの完全燃焼に必要な空気量を計算します。

まず、メタンの完全燃焼反応式は次の通りです。

CH4 +2O2 → CO2+2H2O

この式から、メタン 1 m³ を完全燃焼させるには、2 m³ の酸素が必要であることがわかります。

次に、空気中の酸素の体積比は、

 1 / (4+1) = 1/5 

したがって、メタン 1 m³ の燃焼に必要な空気量は、2 ÷ (1/5) = 10 m³ となります。

与えられたメタンの体積は 5 m³ なので、理論上必要な空気量は次の通りです。

10 × 5 = 50 m³

最後に、空気比が 1.5 であるため、実際に必要な空気量は理論量の 1.5 倍になります。

50 × 1.5 = 75 m³

問9 メタン 90 vol%、プロパン 10 vol% からなる混合ガスの空気中における燃焼下限界(vol%)として、最も近い値はどれか。ただし、同条件における単体ガスの燃焼下限界は、メタン 5.0 vol%、プロパン 2.0 vol% とする。

(1)3.5 (2)3.7 (3)3.9 (4)4.3 (5)4.7

答え

答え(4)4.3

プロパンとメタンの混合ガスの燃焼下限界は、ルシャトリエの法則を用いて計算できます。

ルシャトリエの法則の式は以下の通りです。 

L = 100 / (P1/L1  + P2/L2 + ⋯ + Pn/Ln)

ここで、

L:混合ガスの燃焼下限界 (vol%)

Pi : 混合ガス中の各成分ガスの体積百分率(vol%)

Li : 各成分ガスの燃焼下限界 (vol%)

与えられた値は以下の通りです。 

メタン (CH4)

P1 =90 vol%

L1 =5.0 vol%

プロパン (C3H8)

P2 =10 vol%

L2 =2.0 vol%

これらの値を式に代入します。

L = 100 / (90/5.0 + 10/2.0)

L = 100 / (18+5)

L = 100/23

L ≒ 4.3 vol%

問10 気体容器内の圧力を測定するため、水を注入したマノメーターの一端を気体容器に接続し、別の一端を大気開放した。水位の差 H は 50 mm であった。気体容器内のゲージ圧力(Pa)として、最も近い値はどれか。ただし、水の密度は 1000 kg/m³、重力加速度は 9.8 m/s² とする。

(1)49 (2)196 (3)490 (4)980 (5)1960

答え

答え(3)490

水の入ったマノメーターで測定される圧力は、液柱の高さによって生じる圧力差として計算されます。この圧力差は以下の式で表されます。

P = ρ⋅g⋅H

ここで、

P: ゲージ圧力 (Pa)

ρ: 液体の密度 (kg/m³)

g: 重力加速度 (m/s²)

H: 水位の差 (m)

与えられた値は以下の通りです。 

水の密度 (ρ) = 1000 kg/m³

重力加速度 (g) = 9.8 m/s² 

水位の差 (H) = 50 mm = 0.050 m

これらの値を式に代入します。

P = 1000 kg/m³ ⋅ 9.8 m/s² × 0.050 m 

P = 490 Pa

問11 管内を流れる流体に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)壁近くでは、流体が粘性の影響を受けて流速が急激に変化する。

(2)流体の粘性や乱れによって、流れの下流の圧力が上流の圧力と比べ低くなることを圧力損失という。

(3)配管の屈曲部で生じる圧力損失は、流れの方向を急激に変化させるより緩やかに変化させる方が小さい。

(4)直円管内の流れでは、レイノルズ数がある値以上となると層流から乱流に遷移する。

(5)乱流における管摩擦係数は、管壁面の粗さに依存しない。

答え

答え(5)

乱流における管摩擦係数は、管壁面の粗さに依存する

問12 熱交換器において、高温流体の入口温度は 180°C、出口温度は 50°C であった。また、低温流体の入口温度は 20°C、出口温度は 90°C であった。このときの高温流体の温度効率(%)として、最も近い値はどれか。

(1)28 (2)44 (3)74 (4)81 (5)88

答え

答え(4)81

高温流体の温度効率 (η) を計算するためには、次の式を使用します:

η = {(T1−T2) / (T1−T3)} × 100

ここで、

T1 は高温流体の入口温度 (180°C)

T2 は高温流体の出口温度 (50°C)

T3 は低温流体の入口温度 (20°C)

(180-50) / (180-20)

= 130/160

≒ 0.81

問13 伝熱に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)熱伝導での伝熱量の大きさは、温度勾配に比例する。

(2)対流熱伝達には、自然対流や強制対流、相変化を伴う沸騰と凝縮等の様々な形態がある。

(3)熱放射では、原子や分子のような物質を介さず、真空中でも伝熱が可能である。

(4)外部から入射してくる電磁波を完全に吸収する仮想の物体を、黒体という。

(5)熱交換器では対流熱伝達が生じ、熱伝導は生じない。

答え

答え(5)

熱交換器では対流熱伝達と熱伝導が生じる

問14 材料の破壊に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)無限の繰り返し数に破断しないで耐えることのできる応力振幅を、破損限度と呼ぶ。

(2)クリープは、応力が大きいほど、温度が高いほど、顕著に現れる。

(3)応力腐食割れは、引張応力によって起きるが、圧縮応力によっては起こらない。

(4)アルミニウム等の面心立方晶金属には、低温ぜい性が認められない。

(5)溶接部近傍で生じる遅れ割れは、拘束応力や冷却速度が大きくなる大型構造物で発生しやすい。

答え

答え(1)

無限の繰り返し数に破断しないで耐えることのできる応力振幅を、耐久限度と呼ぶ。

問15 ある延性材料の試験片について、常温で引張試験を行ったところ、降伏点での引張応力が 450MPa であった。この材料を許容応力 90MPa で使用するときの安全係数として、最も近い値はどれか。

(1)0.2 (2)0.5 (3)2 (4)5 (5)10

答え

答え(4)5

安全係数 = 降伏点での引張応力 / 許容応力

降伏点での引張応力:450 MPa

許容応力:90 MPa

より、

450 / 90

= 5 MPa