ガス主任技術者試験甲種の製造科目で過去に出題された問題の中から9問抜粋しました。
問1 製造設備に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
イ 真空断熱式円筒形LNG貯槽の内槽と外槽の間は、外部入熱を防ぐため、断熱材が充てんされ、高度の真空状態に保たれている。
ロ LNG貯槽の保冷材は、適切な強度を有し、低温域での熱伝導率が小さいこと、吸水率が大きいこと、難燃性、耐熱性に優れていることが要求される。
ハ ポンプのキャビテーションを防止するために、必要有効吸込ヘッド(NPSHre)は、有効吸込ヘッド(NPSHav)より大きくなければならない。
ニ LNGローリー出荷設備は、液ラインとガスラインで構成され、出荷(払出)ポンプの吐出圧を利用してLNGを充てんし、ボイルオフガス(BOG)は貯槽へ戻される。
ホ LNGサテライト基地のLNG配管とLNG ローリーを接続するローディングアームは、金属パイプとスイべルジョイントを組合せたものであり、各スイべルジョイントを支点として自由に動くことができる。
答え2
ロ ×
LNG貯槽の保冷材は、適切な強度を有し、低温域での熱伝導率が小さいこと、吸水率が小さいこと、難燃性、耐熱性に優れていることが要求される。
ハ ×
ポンプのキャビテーションを防止するために、必要有効吸込ヘッド(NPSHre)は、有効吸込ヘッド(NPSHav)より小さくなければならない。
問2 ガスの成分分析に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
イ 試料ガスの発熱量は、ガスクロマトグラフ法によって得られた成分組成と、それぞれの成分の発熱量を用いて算出することができる。
ロ ガスクロマトグラフの熱伝導度検出器(TCD)は、有機化合物にしか感度を示さないが、非常に高感度である。
ハ ガスの比重は、ガスクロマトグラフ法の他に、ブンゼン-シリング法や比重瓶法によって測定することができる。
ニ 硫化水素の分析方法として、よう素滴定法やメチレンブルー吸光光度法等がある。
ホ アンモニアの分析方法として、中和滴定法やインドフェノール吸光光度法等がある。
答え1
ロ ×
ガスクロマトグラフの熱伝導度検出器(TCD)は、無機化合物・有機化合物の両方検出できるが、感度がFIDより低い。
問3 都市ガスの付臭に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
イ ターシャリーブチルメルカプタン(TBM)、テトラヒドロチオフェン(THT)、ジメチルサルファイド(DMS)のうち、閾値*が最も低いのはDMSである。
ロ 蒸発式付臭設備の設置場所は、圧力、温度の変動が小さく、管内ガス流速が小さいところが望ましい。
ハ 付臭剤貯蔵タンク、受入設備、注入装置等の設備は、密閉した付臭室内に設置することが望ましく、室内はやや正圧にして換気する。
ニ 蒸発式付臭設備では、蒸発した付臭剤の混合比率を一定に保つことが困難なため、一般的に混合付臭剤を使用することは適当でない。
ホ 滴下注入方式は、比較的規模の大きい付臭設備に最適な注入方式である。
*「閾値」とは、臭いのついているガスを除々に希釈し、臭いを感じなくなる時の濃度をいう。
答え4
イ ×
ターシャリーブチルメルカプタン(TBM)、テトラヒドロチオフェン(THT)、ジメチルサルファイド(DMS)のうち、閾値*が最も低いのはTBMである。
ロ ×
蒸発式付臭設備の設置場所は、圧力、温度の変動が小さく、管内ガス流速が大きいところが望ましい。
ハ ×
付臭剤貯蔵タンク、受入設備、注入装置等の設備は、密閉した付臭室内に設置することが望ましく、室内はやや負圧にして換気する。
ホ ×
滴下注入方式は、比較的規模の小さい付臭設備に最適な注入方式である。
問4 都市ガス製造工場の電気設備に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
イ 電気を安全に適正に利用するには、電気回路以外の部分へ電気が流れないようにすることが必要であり、配線や機器では電線相互間、電線と大地間等は、電気抵抗の小さい物を用いて相互を絶縁する。
ロ 無停電電源設備(UPS)は、鉛蓄電池、アルカリ蓄電池等の蓄電池とVVVF(可変電圧可変周波数装置)から構成される。
ハ 常用発電設備は、電気事業法の「発電所」に相当し、発電所としての工事、維持、運用が行われている。
ニ 防爆電気機器及び配線方法の選定は、危険場所の種類、対象とする可燃性ガスの爆発等級及び発火度等の危険特性、点検及び保守の難易度等を考慮して決定する。
ホ 容器の内部に空気、窒素、炭酸ガス等の保護ガスを送入し、又は封入することにより、当該容器の内部にガス又は蒸気が侵入しないようにした防爆構造は、「耐圧防爆構造」という。
答え3
イ ×
電気を安全に適正に利用するには、電気回路以外の部分へ電気が流れないようにすることが必要であり、配線や機器では電線相互間、電線と大地間等は、絶縁物を用いて相互を絶縁する。
ロ ×
無停電電源設備(UPS)は、鉛蓄電池、アルカリ蓄電池等の蓄電池とCVCF(定電圧低周波数)から構成される。
ホ ×
容器の内部に空気、窒素、炭酸ガス等の保護ガスを送入し、又は封入することにより、当該容器の内部にガス又は蒸気が侵入しないようにした防爆構造は、「内圧防爆構造」という。
問5 設備保全に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
イ 状態監視保全(CBM)は、時間を決めて行う保全方式であり、一定の期間をおいて行う定期保全と設備が予定の累積運転時間に達した時に行う経時保全がある。
ロ 事後保全(BM)は、故障が起こった後、設備を運用可能な状態に回復する保全方式である。
ハ 改良保全(CM)は、設備の信頼性、保全性、経済性、操作性、安全性等の向上を目的として、設備の材質や形状を改良する保全方式である。
ニ 保全予防(MP)は、新設備の建設段階にさかのぼり、信頼性、保全性、経済性、操作性、安全性等を考慮した設計を行い、保全費用と劣化損失を最小化しようとする保全方式である。
ホ リスクペース保全(RBM)は、高経年化した設備の、各部位に対する保全の重要度、緊急度を損傷事例や寿命評価理論を基に評価し、(リスク)=(発生した場合の影響度)×(発生確率)で表して優先度をつける保全方式である。
答え1
イ ×
時間計画保全(TBM)は、時間を決めて行う保全方式であり、一定の期間をおいて行う定期保全と設備が予定の累積運転時間に達した時に行う経時保全がある。
問6 災害防止に関する次の記述について、「 」の中の(イ)~(ニ)に当てはまる語句の組合せとして最も適切なものはどれか。
地震、台風、高潮、洪水等の天災や火災等のガスにかかわる重大な事故の発生、若しくは発生が予想される場合に備え、対策の基準を定め、災害等における
「イ」の万全を期すとともに、関連業務の適切な遂行を通じてライフライン事業者としての「ロ」 を全うしなければならない。
災害対策の基本的な目標は以下に示す通りであり、その達成に全力を尽くすべきである。
① 災害による被害の予防
② 「ハ」の防止
③ 従業員、家族の安否の確認及び安全の確保
④ ガス製造設備被害の「ニ」
⑴(イ)設備維持管理体制 (ロ)供給責任 (ハ)二次災害 (ニ)状況把握
⑵(イ)ガス製造供給体制 (ロ)供給責任 (ハ)一次災害 (ニ)早期復旧
⑶(イ)設備維持管理体制 (ロ)社会的責務 (ハ)一次災害 (ニ)状況把握
⑷(イ)ガス製造供給体制 (ロ)社会的責務 (ハ)一次災害 (ニ)状況把握
⑸(イ)ガス製造供給体制 (ロ)社会的責務 (ハ)二次災害 (ニ)早期復旧
答え5
問7 環境対策に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
イ 都市ガス燃料の場合は、燃焼管理を十分に行うことで、ばいじんの発生を大きく抑制することができる。
ロ COD(化学的酸素要求量)は、水中の有機物が微生物の働きによって分解されるときに消費される酸素の量のことである。
ハ 電気エネルギーの管理では、力率を0に近づけると省エネルギー効果を上げることができる。
二 窒素酸化物(NOx)の発生において、サーマル(Thermal) NOxは燃焼雰囲気の温度及び酸素濃度が低いほど増加する傾向がある。
ホ LNG 冷熱エネルギーの有効利用率をLNG基地全体として評価するには、冷熱エネルギ一及び圧カエネルギーを考慮したエクセルギー解析を用いることができる。
答え3
ロ ×
BOD(生物化学的酸素要求量)は、水中の有機物が微生物の働きによって分解されるときに消費される酸素の量のことである。
ハ ×
電気エネルギーの管理では、力率を1に近づけると省エネルギー効果を上げることができる。
二 ×
窒素酸化物(NOx)の発生において、サーマル(Thermal) NOxは燃焼雰囲気の温度及び酸素濃度が高いほど増加する傾向がある。
問8 都市ガスの熱量調整と燃焼性管理に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
イ 空気により希釈された混合ガスを高圧供給する場合、保安上酸素濃度が4%以上とならないように空気混合量を管理する必要がある。
ロ ガス-ガス熱量調整方式は、液-ガス熱量調整方式よりランニングコストが高い。
ハ 液-ガス熱量調整方式は、LPGを気化させるための熱源として気化されたNGの顕熱を利用するため、NGの温度により運転範囲に制限を受けない。
ニ ウォッべ指数は、供給ガスの圧力や組成が変わるときなどに行われるガス機器ノズルの開度調整に必要な指数である。
ホ 液-液熱量調整方式は、LNGにLPGを混合するため、LNG以外の成分の凍結による閉塞対策等が必要となる。
答え1
ハ ×
液-ガス熱量調整方式は、LPGを気化させるための熱源として気化されたNGの顕熱を利用するため、NGの温度により運転範囲に制限を受ける。
問9 原料受払い計画に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
イ 貯蔵LNGと受入LNGの密度差が一定値を超さないように管理し、層状化が発生しないように受入計画を作成する。
ロ LNG受入れ時にボイルオフガス(BOG)が大量発生することから、BOG処理方法や電力デマンド管理などが必要である。
ハ LNG貯槽内のLNGは、外部からの入熱で濃縮(熱量上昇)が進むが、濃縮度合いは貯槽レベル等にかかわらず常に一定であることを加味した上で熱量管理を行う必要がある。
ニ LNGサテライト基地での原料受払い計画は、BOG処理量や処理方法が限定されていることが多いため、特に注意が必要である。
ホ LNG貯槽内のロールオーバー現象の発生を防止するため、貯槽内LNGの水平方向の密度分布を常時監視することが必要である。
答え2
ハ ×
LNG貯槽内のLNGは、外部からの入熱で濃縮(熱量上昇)が進むが、濃縮度合いは貯槽レベルによって異なることを加味した上で熱量管理を行う必要がある。
ホ ×
LNG貯槽内のロールオーバー現象の発生を防止するため、貯槽内LNGの高さ方向の密度分布を常時監視することが必要である。